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一年前、出会ったその日から。
なるちかくんの方がいつも、わたしよりずっと上手で、だから、そんななるちかくんには、悩みごとなんてないんだと勝手にそう思っていた。
たとえ、悩みごとがあったとしても、それは、わたしとはぜんぜん次元のちがうところにあるのだと、思ってたの、漠然と。
「ほのかー、どうしよ、ぜんっぜんわかんない! ヘルプ!」
「玲奈より俺の方がぜってー分かってねーから、先こっち」
「はあ!? 麟太郎、さっきからほのかのこと独占しすぎ!」
「まあまあ、ふたりとも落ち着いて……、順番に、ね?」
さっきからずっとこの調子の、れーちゃんとりんくんに苦笑い。
あれから……、なるちかくんの秘密を偶然暴いてしまってから、はやくも一週間が経った水曜日、昼休み。
今日の保健室は、とってもにぎやかだ。
「れーちゃん、どの辺りが……」
「ほのか〜〜っ、さっきからねっ、ずっとここの方程式を解いてるんだけど、どうしてもyが求まらなくて……っ」
れーちゃんが解いている参考書を覗きこむ。
ええと……、れーちゃんが立てた式の方針はまちがっていないみたい、だから。
「ええとね」
「うん」
「こっちの数式を、一旦整理してみて?」
「わかった!」
「それで、これをここに代入して……うん、そう、それで計算ミスだけ気をつけて、そうそう」
「わ! できた!」
「よかった」
すっきりした様子のれーちゃんに微笑むと、れーちゃんがぎゅうう、と抱きついてくる。
「やっぱりほのか天才! 神さま! ほのかのおかげでいつも、ぎりぎり赤点回避できてるんだよ〜〜っ」



