いちばん星の独占権




保健室の利用カード。

体温だけわたしが書き込んでから、鉛筆といっしょに、遠慮がちに手渡すと。


なるちかくんは受け取って、さらさらと書き入れてくれる。




『俺、センセー探してくるわ』

『じゃあ、私は三上くんの荷物取りに行ってくるね!』




りんくんとれーちゃんが、口々にそう言って慌ただしい足音を立てながら出て行ってしまう。

助かる、もちろん助かるんだけど……初対面のひとと、ふたりきり、はちょっと困る。



人見知りっていうほどではないけれど、緊張しないはずもない。




『……』




しん、と静まりかえった保健室には、なるちかくんのちょっと荒い吐息だけが響いていて。



気まずさをごまかすため、なるちかくんがせっせと書いている利用カードを覗きこんだ。




右上がりのクセがある、角ばった特徴的な字が並んでいる。

クセのある字だけど、読みにくいわけじゃない。

なんか……うん、なんだかな、三上成哉の字って感じなの。




つつつ……と文字列に目をすべらせていく。





症状は発熱と寒気、具合がわるくなったのは学校に来てから。朝ごはんはマル、睡眠時間もばっちり……。