どく、と心臓が鳴った。
好きなひとにしか、しない。
もしそれがほんとうなら────。
期待しかけて、でもそれはすぐにひしゃげてしまう。
「まー、でも、女なら誰でもって男もうじゃうじゃいる」
「そう、なの?」
「男子高校生なんてそんなもんだろ」
「そうなんだ……」
「あとは海外かぶれのヤツとかもな。俺のクラスにひとりいる、キスは挨拶っつってる男」
あっけなく、期待のつぼみはしおれてしまった。
だって、なるちかくん女の子に慣れてるんだもん。
女の子がよろこぶツボを平気で押してくる、いつも余裕な顔で、体にふれても、キスをしても────。
でも、それもそのはず。
なるちかくんは、りっちゃん先生が、好き。
ほかの女の子にドギマギするはずもない。
それを知っているわたしは、落ちこむ資格もなくて、それなのに、しゅんとしてしまう。
────きっと、わたしにくれたキスも、魔が差しただけ。
わたしだけが、ずっと覚えてるんだ。
なるちかくんは、きっともう忘れている。
それでもいいって、素直に思えたらいいのに。
「……恋って、難しいね」
聞こえるか聞こえないか、それくらいの小さな声でぽつりと呟いた。
────気づけば日が沈みはじめていて、夕暮れどき、茜色のひかりが真正面からさして、りんくんの表情は逆光でよく見えなかった。



