っ、え。
待って、今の、聞こえて……っ?
と、焦ったのも一瞬。
「なんてな。カマかけてみただけ」
「っ、もう!」
からかわれたんだ。
あやうく引っかかるところだった。
腹いせに、軽くにぎったこぶしを、なるちかくんにぽかっとぶつけておく。
「イテッ。え、怒ってる? なんで?」
「怒っては、ないです!」
「はは」
目尻を柔らかく下げたなるちかくんは、もう一度、ベッドのそばの椅子に腰かけた。
その手には、ねこのイラストが入ったマグカップひとつ。
見覚えがあるのは、それが保健室の備品だからだ。
「よかったら、どうぞ」
「これって……」
ふわっと湯気が立ちのぼるカップを両手で受けとった。
あったかい……。
「ココア。好き?」
「好き、だけど……」
「あったかいの、飲んだらちょっとはマシになるかもしんねーなって」



