なるちかくんの肩をとん、と押して、もう一度しっかりと座らせる。
それを確認してから、くるりと背中を向けた。
あ、一応もう一回念を押しておこう。
『念には念』って言うもん。
「なるちかくん、動いたら、ぜったいだめだよ?」
「ちょ、ほのかちゃん、待っ」
ラムネの屋台へと向かうべく、なるちかくんの引き止める声を無視して、背中を向けた。
「……俺、ほんとに、呪われてる?」
なんて、なるちかくんの、まったく見当違いに独りごちる声を背に、たんたんと石段を降りていく。
りっちゃん先生とあの男の人は、まだ、すぐ近くにいて楽しそうに体を寄せあっていて、その横をそっと通り抜けた。
────なるちかくんには、こんなりっちゃん先生、見てほしくないの。絶対、いやなの。
誰がどう見たって幸せそうに恋人と肩を並べるりっちゃん先生を見て、なるちかくんがどう思うか、想像しただけで苦しかった。
きっと、ものすごく傷ついてしまう。
痛くてもどかして、苦しくて。
……でも、それを、全部飲みこんで、ごまかして笑うひとだ、なるちかくんは。



