なるちかくんがかすかに笑って、あんずあめをわたしの口に器用に押しこんだ。
ひんやりあまくて、舌の上で溶けてとろける。みずみずしくてまちがいなく美味しい……けれど、正直それどころじゃない。
なるちかくんの指先が離れていく前に、わずかに唇にふれたような気がして、そのことばかりに気をとられて味に集中できなくて。
なんとかもごもご咀嚼して、飲み込めば。
「ふは、顔、真っ赤」
「なるちかくんのせいだから……!」
「ドキドキした?」
「ドキドキっていうか、慣れてないだけ……っ」
うそ。
ちゃんとドキドキもした。
けれど、認めてしまえばもう、引き下がれないような気がして、それは、まだ怖い。
「ドキドキしてくれたっていいのに」
「すぐそういうこと言う……」
「今日は “デート” なんだし?」
ああ、もう。
“デート” って言ったって、それはただのタテマエなのに。
なるちかくんだって、全然そんなつもりはないくせに。
なるちかくんに少しも悪気がないことを知っていても、どうしてか、心の中でいじけてしまう。



