「それにしてもなんで夏帆が知ってんの?」
灯の純粋な疑問。私もそれは思った。
ちなみに、誰にも夏樹が好きなことは言ってないし、言うつもりもなかった。みんなは優しいから好きだ、って言ったら協力してくれるだろうけど、なんだか照れくさいし、1人でこの気持ちは抱えておこうと決めていた。
今までだって、好きな人がいなかった訳じゃないけど、友達に相談したことはない。
やっぱり照れくさいから。
「んー、なんかさっきトイレで誰かが言ってた。」
てきとーな夏帆にずっこけそうになる。
おい…!
「まあだから真偽の程は確かじゃないけどねん。」
ペロリと舌を出して笑う夏帆は、無責任の塊そのものだ。
でも私は、トイレにいたよく知らない女子が知っているようなことを、なんで知らなかったんだろう。
思えば、夏樹と恋バナをしたことなんてないし、彼女がいないなんて聞いたわけでもなかった。
避けている訳では無いけど、やっぱりしょうもない話で盛り上がっている方が楽しいから。
案外、恋バナを振ればしてくれる奴だったのかもしれない。
