「日詠先生。今、予約時間、約2時間遅れ状態ですが、高梨さんの順番、どうしますか?」
・・・帝王切開手術予定となった妊婦さんに手術の説明をする
・・・双子を妊娠した妊婦さんの不安に耳を傾ける
・・・妊娠中でも体を動かす仕事をしていてお腹の張りが強くなった妊婦さんにくれぐれも無理はしないように助言する
・・・避妊失敗で妊娠した女子高生からの中絶の申し出に、胎児の生命の話と中絶が体と心にどう影響するかを一緒に話し合う
妊婦さんに生じている問題にタイムリーかつ丁寧に向き合っていると診察時間はどうしても長くなる
ただでさえ体がしんどいと思われる妊婦さんを待たせることはいいことではないとわかっているだけに申し訳なく思う
『診察、遅れ気味で申し訳ないです。体調不良の妊婦さん、出ていなければやはり高梨さんは最後にと思うのですが、どうです?』
「体調を崩した妊婦さんは今のところいませんが、その高梨さんが・・・」
少し困った様子の看護師。
体調を崩した妊婦はいないらしいのに、伶菜がどうしたんだ?
メンタルも落ち着いてきていると思っていたのに、もしかしてまた何か無茶なことをとか?
『ど、どうしました?』
「そんなに慌てなくても大丈夫ですよ。高梨さんですが、座ったまま眠っていらっしゃって・・・順番変えて頂くようお願いしようと思ったのですが。」
居眠りってヤツか
これから彼女が動揺してもおかしくない話をするんだ
今はまだ、それぐらいのゆとりがあるぐらいのほうがいい
『とりあえずそのまま寝かせてあげて、また目が覚めたら声をかけてあげて下さい。』
「承知しました。」
待合室で居眠りをしているらしい伶菜にはそのままでいてもらいながら、俺は他の妊婦さんの診察を続けた。



