ラヴシークレットルーム Ⅰ お医者さんとの不器用な恋



それから、1週間が経ち、また外来診察日である木曜日を迎えた。


「日詠先生、今日の午後も患者さんの予約、いっぱいですね。」

昼休みを終えた午後の診察開始前。
処置室側のドアから入った俺よりも先にパソコンをログインした看護師さんが外来診察予約状況を教えてくれた。


『じゃあ、早速、診察を始めましょうか。』

「今のところ、緊急や体調の急変で順番を早めたほうが良さそうな妊婦さんはいないみたいです。」

『わかりました。』

診察用チェアに腰掛けながら返事をした直後、予約画面の一番上に表示されていた妊婦さんの氏名にカーソルの矢印を合わせようとした瞬間、目に入った名前。


【15:30予約 高梨 伶菜】


『・・・・・・・・』

そういえば今日、彼女の予約日である木曜日だったか

今までの木曜日は密かに待ち遠しい木曜日だった
でも、今日の木曜日は正直迎えたくない木曜日

そんなこと考えちゃダメだとわかっているけれど、そう思わずにはいられなかった。




「日詠センセ?パソコン、フリーズしちゃいました?」

『あっ、いえ、そうじゃないです。」


それでも、伶菜と向き合ってちゃんと説明をしなきゃいけない
俺は彼女の主治医だから・・・


「じゃ、患者さん、お呼びしますね。」

『あっ・・今日は診察の進行具合をみながら、診察の順番を変更させてもらうかもしれません。』

「どなたか、気になることが?」


診察の順番を変えるかもしれない理由
それは、伶菜の診察に時間がかかるということ

今日は伶菜の後にも他の妊婦さん達の診察予約が入っているため、時間に追われながら診察をすることになる
そんな状況で伶菜の胎児の病状を説明したら、彼女の些細な心の変化を見逃してしまうかもしれない


『高梨さんに病状の説明をしようと思っていて、おそらく時間がかかることが予想されるんです。診察が遅れ気味になるようだったら彼女の順番を最後にさせて貰うかも。』


それなら、ゆっくり時間が取りやすい順番である最後がいい
多分、今日の診察でそれが俺にとっての一番大きな仕事になるだろうから

その仕事の後に、他の妊婦さんの診察ができるかも正直不安
だから不安要素はなるべく払拭しておきたい

それが理由
余裕がないことを自覚しているから・・・


「わかりました。また、変更になりそうであれば高梨さんに声をかけるので教えて下さい。」

俺はコクリと頷き、ようやく午後一番最初に診察する妊婦さんの氏名をクリックした。