『福本さん。』
「なあに?ナオフミく・・日詠先生?」
余程、俺が情けない空気を持ち込んでいたのか、 彼女独特のいつもの陽気な声のトーンがいきなり下がる。
『お話があるのですが・・・。』
「いいわよ。ここじゃなんだから、カンファレンスルームに移動しましょ。」
彼女は作業途中だったらしいノートパソコンをパタンと閉じて立ち上がった。
「あんまりいい話じゃなさそうね、どうしたの?」
『伶菜のことです。』
福本さんは歩きながら心配そうな顔して首を傾げる。
「ケンカでもしたの?ってまだそんな深い関係に戻ってないわよね?」
『何も話してないです。』
「じゃあ、どうしたのよ?」
製薬会社の薬品名がプリントされた3色ボールペンをカチカチとノックしながら、早く内容を言えという空気を醸し出す彼女。
普段、福本さんに妊婦さんの異変を伝える時、こんなにも躊躇うことなんてない
同じことをするだけなのにこんなにも胸が重苦しいなんて
正直、初めてだ
『胎児に疾患が見つかりました。』
「えっ!!!!! ここまで順調だって聴いてるわ。」
『エコーで見つかったんです。』
信じられないという顔を覗かせた福本さん。
「・・・・・・・・・」
『・・・・・・・・・』
お互いに言葉を失った俺達はしばらく黙ったままカンファレンスルームのほうへ歩いた。



