そして
「アイツに託すしかないだろう。小児のリスクの高いオペでアイツの右に出るドクターは国内にはいない。」
『アイツとは、どこの・・どこのドクターですか?』
「東京医科薬科大学だ。」
俺にとって一番遠くにあると感じている場所だった。
東京医科薬科大学病院への転院になると、伶菜がひとりで東京へ行くことになる
もうすぐ妊娠9ヶ月になる彼女にとって、いくら新幹線を利用したとしても、そこは近い場所ではない
妊娠を知ったばかりの頃はメンタルが不安定だった彼女
今はかなり落ち着いてきているけれど
胎児に病気があることだけでも大きなストレスをかけるのに
その上に地元名古屋を離れるだなんて・・・・
『名古屋医大でだって、充分対応可能なんじゃ・・・』
「母体の管理は私達でも充分可能。でも、この胎児の手術は特殊なものになる。それをこなせるドクターはウチにはいない。」
『でも、ウチの大学の小児外科のドクターは全国的にも有名なはずじゃ!!!!!!』
「日詠クン。取り乱すなんてキミらしくないだろ。」
声を荒げた俺は冷静な三宅教授に制止された。
でも、まだ納得できない。
『それでも・・・・』
「ウチの大学ができることできないことは私のほうが熟知しているはずだ。」
『・・・・・・・』
いくら自分の母校とはいえ、大学内の事情は現役教授のほうがわかっているに決まってる
三宅教授の言う通りだ
「それにアイツのスキルの高さも、キミよりもわかっているつもりだ。」
『三宅教授・・・』
「キミと彼の間で、今まで色々あったかもしれない。でなきゃ、東京にいたキミがわざわざウチの大学に来ることもなかっただろう。」
三宅教授と ”彼” の間柄も教授本人から聴かされている



