今日も週1回の定期健診の日。
今日は午後の最終予約時刻に来るように言われていた。
日詠先生の外来診察待ち時間はかなり長い。
待合室は診察予約しているにも関わらず、いつも妊婦さんでごった返している状態。
この日も診察予約時刻から2時間遅れであるという手書きの張り紙が産科受付のカウンターに張り出されていた。
携帯電話を操作する妊婦さん
女性雑誌を読んでいる妊婦さん
連れてきた子供さんと一緒にお菓子を食べている妊婦さん
まだあまりお腹の膨らみは出ていないけれど気分の悪そうな妊婦さん・・・・悪阻が酷いのかな?
待合室は様々な人間模様を映し出していた。
そして日詠先生の診察室のドアが開き、そこにはカルテを持った看護師さんの姿。
待合室の空気はまるで神様が通ったかのように急に静まり返った。
「た、田中さん、田中美紀さん、大変お待たせ致しました。中へお入り下さい。」
何人かの妊婦さんの視線が一瞬、診察室の前に立つ看護師さんのほうへ向けられ、私もその視線の一部となる。
診察が2時間遅れていると書いてあるにも関わらず、看護師さんの”た”の一言で自分の順番が回ってきたかと思ってしまった。
高梨の・・・”た”
きっと診察室のほうへ振り向いた何人かの妊婦さんは私と似た様な境遇だったんだろう。
私は膝の上に載せて読んでいた育児雑誌に再び目をやった。
でも集中力がプッツリと切れてしまった私はいくら雑誌のページを捲っても熟読はできていなかった。
2時間待ちか・・・長いなと溜息をついた私はなんら面白くもない2時間ドラマを途中から観て過ごすことに決めた。



