「また、あの妊婦さん、検診とか来ますかね~♪よし、木曜日、要チェックや~。」

「来週から里帰り出産とかで他の病院へ転院ってこともあり得るぞ。ウチの奥さんもそうだったし。」

木曜日って俺の外来診察日
それって俺の担当患者さんか?!

それに玄関で写真って・・・・まさか・・・な
他の妊婦さんにもエコー写真、渡していることだし



「矢野ぶちょお、そんなコト、言わないで下さいよ。」

「いい歳して叶わない恋をしないほうがいいぞ。仕事に集中してくれれば俺はそれでいい。」


矢野部長に激しく同意
俺の担当患者さんかもしれない人で、既婚者である可能性の高い人に好意を抱くとか
同じ職員として正直迷惑
妊婦さんに変なストレスがかかるとか絶対よくないだろ


『もしウチの外来エリアでウロつくようなら、出入り禁止にでもしてやろうか。』


俺はさっき自分が奥野さんに睨まれたように、今度は色ボケしていそうな矢野先生の部下らしき男をギロリと睨んだ。

ウチの病院の医師みたいだけど、できれば、今後一切、こういう男とは関わりたくない
はぁ~っと溜息をつきながら、俺はいつもの如く屋上へ向かった。


伶菜の姿を俺の日常の中で見かけなくなった日々は

奥野さんや福本さんにからかわれたり、面倒臭くてうさん臭そうな他科医師の言動に気を取られたりしながら

平穏に過ぎって行った。



ある時を迎えるまでは。