木曜日だけデレ顔発言を聴かされて、自分自身はどうもしっくりきていない俺は、少し頭を切り替えようと休憩を取ることに。
途中、通りかかった売店で空いた小腹を満たせそうな物を物色していた。
『メロンパンばっかりじゃ、また店員にも小言とか言われそうだ。』
手に取っていたメロンパンをまた陳列棚に戻す。
間食でコメを食べてもいいかと辛子明太子おにぎりを手に取る。
ついでにお茶でも買おうと冷蔵ケースの方へ歩いている途中だった。
「矢野先生。さっき、玄関にいた妊婦、見ました?」
妊婦という声を聴いて、自分の担当患者さんかもしれないとその声がするほうへ振り向いた。
そこには白衣姿と手術着姿の男性医師2人組の姿あり。
「またかね、森村クン。」
『いや~、今回は結構真剣です。本当に可愛くて。』
右手にバナナ、左手に牛乳を握り締め、顔をくしゃくしゃにしながらそう語る手術着姿の男。
可愛くて・・・か・・・
よく意味がわからないけれど
とりあえずその妊婦さんの急変とかじゃなさそうだな
「でも、妊婦さんじゃないか。他の男のモノだよ。」
「それでも、目がパッチリ、くりくりしていて、ニコニコしながら一生懸命、写真を見ている顔に俺、胸キュンしちゃったんです。」
「森村クンも年頃だから胸キュンするなとは言わないが、まずは来年の手の外科学会の発表の抄録、早く出すように。」
「・・抄録・・・マジ面倒臭い。」
このふたり
確か、整形外科の矢野部長と・・・
もうひとりの、 手術着がハチ切れそうなぐらい筋肉が無駄についていて、上司に対しても態度がデカそうなこの男
医局で見かけたことがあるような気がするけれど
多分話したことはないはず