「給湯室でなんて顔してるのよ・・・」
『・・・三宅か。産婦人科に用事でもあるのか?』
「内科医は産婦人科病棟に来ちゃいけないって決まりでもあるの?」
『・・・・ないよな。』
「じゃあ、いいじゃない。勿論、アナタに用事よ。」
余程情けない顔をしていたのか、大学時代の同期の三宅という女医に声をかけられた。
彼女は俺の母校である名古屋医大の産婦人科教室の三宅教授の娘
ちなみに彼女の母親も開業医の産婦人科医師だ
「この前、父と一緒に飲みに行ったんだって?」
『・・・ああ。断り切れなかっただけだ。』
「ふ~ん。仲良くなってくれるのはいいことよ。父もアナタの腕はかなり認めていることだしね。」
2か月ぐらい前だったか、三宅教授と一緒に酒を飲んだ時に言われた ”婿に来い” というのは、彼女と結婚しろということ
三宅自身も産婦人科医師を目指したが途中で挫折し、内科医となったため、母親が経営している産婦人科の跡継ぎになるのを諦めている
そのため、家業である産婦人科を継いでくれるような婿を探しているってワケだ
なんの話だろう?・・・じゃないな
心あたりは充分あるけれど
突然現れた伶菜のことで、三宅家の婿探しの話なんか、正直頭の片隅にもなかったんだ