ラヴシークレットルーム Ⅰ お医者さんとの不器用な恋



『真里、見て!コレ、かわいい・・・』

そんな私の目に留まったモノ。
それは柔らかい皮革で作られた空色のベビー靴。
そっと手に取った。

爪先部分が手縫いされているせいか、その靴は手作りならではの柔らかさが感じられる。



「ホント、小さくてかわいいね!この色もいいよね!・・・でも、伶菜のお腹の中にいる子供の性別ってもうわかってるの?」

真里は私の掌の上に載っていたその靴を手に取った。


『ううん、まだ。』

その靴があまりにもかわいくて色も私のお気に入りカラー。
それが気になりすぎていた私はお腹の中の子供の性別とかはすっかり頭の中から飛んでしまっていた。


「おいおい・・・まだ、男の子かどうか知らないのに、空色の靴に興味を示したんかい。」

『えへっ。』

「えへっ、じゃないってば!!!!! 産まれてすぐに靴を履くわけじゃないから、これを買うのは産まれてからでもいいんじゃない?」

『・・・そーだね。』

私達はまた顔を見合わせて大きな声で笑い合った。



こんなに大きな声で笑ったのは久しぶり
それはきっと
真里が私と同じペースで妊婦生活に付き合ってくれているという実感ができたから

そして

日詠先生が私に言ってくれたあの言葉 
”なんとしてでも救うから・・・・”
あの言葉があったから

私はこれからの自分が先の見えない不安に襲われても、下を向いているのではなく
しっかりと前を向くように努力していくんだと
心に誓えたんだ