エレベーターを降りると、目の前にはおもちゃ売り場が広がっており、多くの家族連れでごった返していた。
真里と私はその中を掻き分けながら、その奥にあるベビー用品売り場を目指す。
「あった~!!!!」
先を行く真里がやや疲れ気味な声をあげる。
その後ろをゆっくりと歩いていた私もようやくその場所に辿り着いた。
パステルカラーの小さなかわいい衣服
赤、青、黒のおしゃれなベビーカー
人気キャラクターが描かれた寝具用品
妊婦さんが休む事ができるように置かれた白い柔らかそうなソファー
そこは今まで乳幼児との接点が殆どなかった私には異空間のように感じられる。
真里もしばらく黙ったまま辺りを見回している。
きっと真里も同じような事を感じているのかな?
真里の様子を窺った丁度その時、お互いに目が合った私達はようやく口を開き始めた。
『真里・・・・何から選べばいいのかな?こんなにいろいろあると何から手をつけていいのかわかんないよ~。』
「どうだろうね、育児雑誌を立ち読みしたところだと、細かく色々書いてあったけど・・・どれからだっけ?」
初めての妊婦生活を始めた私と初めて妊婦が近くにいる生活が始まってしまった真里。
私達のどちらもとても初々しかった。
「伶菜~♪コレ、かわいいよ!」
『ホントだ。こんなに小さいんだね、産まれたばかりの赤ちゃんが着る服って。』
「げっ!!!!でもコレ、結構なお値段するのね。ここデパートだからこんな値段するのかも・・・赤ちゃん用品専門店だともうちょっとおサイフに優しい値段の物もあると思うからそこ行ってみようよ・・・付き合うからさ!」
真里は仕事もしないで一人で子供を産もうとしている私の経済状況をもしっかりと考えてくれているみたい。
『そうだね・・・・じゃあ、お言葉に甘えて付き合ってもらっちゃお。』
私は自分の置かれた現実をようやく実感しながらも、自分ひとりきりじゃない事も感じられて、肩の力がすっと抜けるような感覚を覚えた。



