「ねえ、伶菜。その先生って・・・男の人?」
探りを入れるような視線でそう言った彼女に対して、私はコクリと頷く。
彼女は飲んでいたホットミルクのマグカップを私に差し出し、ニヤニヤと笑う。
「ふ~ん。そういうコトねぇ。」
『・・・そういうコトって?』
私はニヤニヤ笑い続ける真里を見て、日詠先生のことが気になっているという自分の想いを簡単に見透かされたのがわかった。
「あんた、その先生のコト、好きになったんでしょ?」
やっぱり真里の勘は衰えてはいない
あまりにもあっさりと彼女に言い当てられてしまった私は次の言葉が全く出てこず、頬が紅くなることで彼女の問いかけに対して反応するしかない
「やっぱりね。でもお医者さんってホットミルクとかをいれてくれるんだ。サービスいいよね!なんか意味深~。」
『ち、違う!!!!!・・・私、睡眠薬漬けの生活だったから、それを使わないでもいいようにって配慮してくれてただけだと思うよ・・。』
真里の言葉が日詠先生をからかっているように聞こえてしまった私は思いついた理由を必死に話した。
「ふ~ん。そっか。でも、伶菜、自殺しようとしていた割には表情とかそんなに悪くないから・・・やっぱりその先生に大事にされていたんだね。」
『・・う・・ん。多分。』
日詠先生に大事にされていたのは事実。
そう思ったので私は真里の言葉を素直に肯定。
私達の間には、含み笑いの真里と頬を紅らめるしかない私という私にとってが非常に肩身の狭い空気が流れる。
「まだ話を聴いていたいけれど、長居して疲れさせちゃいけないから・・・・そろそろベビー用品、買いに行こ!」
でも、私が肩身の狭い想いをしていることを察したのか、真里はマグカップをトレーの上に載せて突然立ち上がった。
『あっ、うん。・・・・・よいしょっと。』
軽快な動きの真里に対し、私はちょっぴり重くなったお腹に手をあてながらゆっくりと立ち上がって、彼女と一緒にツインタワー内のデパートの5階にあるベビー用品売り場へ向かった。



