『あったかくて美味しい』
「よかった♪」
『でも・・・』
「あっ、何か足りなかった?何、なに?」
真里は飲んでいたコーヒーカップを机の上に勢いよく置き、目をパチパチと見開いて私にそう尋ねる。
『あっ、違うの。ゴメン・・・”でも” なんて言ったらそう思うよね。あのね、ホットミルクにお砂糖入れたんだけど、母親がよくいれてくれたほんのり甘いホットミルクの味にはならないんだよね。』
真里は私が飲んでいたホットミルクを一口飲ませてと右手を差し出した。
渡したカップを早速、口へ運ぶ真里。
「砂糖、そんなに入ってないね。牛乳の種類が違うのかな?乳脂肪分の比率とか・・・」
彼女も首を傾げながら母親のホットミルクの味の謎に迫ろうとする。
そういえば私、真里に自殺しようとした事は話したけど
日詠先生が助けてくれたコト話してないや
単なる産科の主治医っていうだけだから話さなくてもいいかな?
・・・・単なる産科の主治医?
ううん、それだけじゃない
日詠先生は私と赤ちゃんの命の恩人であって
私が今、最も気になってる人
そのコトを
私の心配をしてくれている真里に話さなくても
ホントにいいのかな?
『そういえば、、私が入院してた病院の産科の先生が寝る前にホットミルクをいれて持ってきてくれてたんだけど』
「・・・・・・・?」
『何故か昔、母がいれてくれた物と同じ味がしたんだよね。』
私は話していたホットミルクの話題にそれとなく日詠先生の存在を絡めてみた。
真里はそんな私の顔をじっと見つめながら、ホットミルクをもう一口飲んだ。



