ラヴシークレットルーム Ⅰ お医者さんとの不器用な恋


ついさっき、手を引かれて歩いた真っ赤なバージンロード。
そこを今日はこのまま帰さないと囁いた彼に抱きかかえられて進む。


彼との出逢いは偶然

でも、偶然の裏に隠れていた真実がいくつもの試練や困難な出来事を経て
今、こうやって私達を結びつけてくれた

運命って本当にあるのかな?
そう思ったこともあるけれど、
今なら、あるって言える


ジンジンする痛みを私の腕に刻みつけるぐらいの力で
電車に飛び込もうとした私の手を強く引いてくれた彼

妊娠という現実に戸惑い、病院の屋上で再度自ら命を絶とうとした私を何度でも助けると力強い声で引き寄せた彼

自分の腕を過信しないあまりに私の主治医を自ら降りて、立ち去った診察室のドアの向こう側で自分を責めながら震えていた彼

真夜中、東京まで私が密かに欲しがっていたベビーシューズを私に内緒で届けてくれた彼

祐希の手術が終わるのを待つ家族待合室で、心が折れそうになった私に、大丈夫だと懐かしい味のホットミルクを差し出してくれた彼

元気になって退院する祐希との新しい生活が始まるのを前に不安だらけだった私に、一緒にウチに帰ろうと手を引いてくれた彼

なぜか入江さんに対抗するかのように私のシフォンケーキにホイップクリームを載せすぎて苦笑いする彼

風邪に犯され熱を帯びた体で私にもたれかかってこのままでいてくれと消えそうな声でお願いしてきた彼

本当は彼と離れたくなんかない私が彼の背中から抱きついた時に、後ろ手で頭を優しく撫でてくれた彼

結婚するために彼の家を出ることになった私が今まで使っていた合い鍵を返しに彼の元へ行ってお別れするはずだったのに、駆け落ちするみたいに私の手を引いて歩み出した彼

2人きりのチャペルで、渡されたオルゴールの中から取り出したパズルのピースを組み合わせるように促し、お互いの運命がちゃんと重なり合ったことを教えてくれた彼

迷うことなく両手を大きく広げて私を受け止め、俺と結婚して下さいとまっすぐに伝えてくれた彼


そして、たった今

ホテル高層階のスイートルームの窓際で、初めて見る夜景を眺めキレイと呟いた私を抱き寄せ、心地いい温かい手で私の頬に支え、唇にそっと触れるような優しいキスで何度も愛しさを丁寧に伝えてくれる彼


そして

「お前が俺の前に現れたのは偶然だった・・・でもそれを運命に変えたのは、どんな時も頑張り抜いたお前なんだ。」

『・・・・・・』

「そんなお前を俺は一生・・・大切にしたい。」

と耳元で囁いてくれる彼


どんな彼も本当に愛しい

お互いに不器用な私達は本当に遠回りをしてしまったけれど
そういう彼と結ばれるという運命があるということを
そういう運命がちゃんとここにあるということを

今なら胸を張って言える



でも、 今だけじゃなくて

これからも

そして

白髪頭のおじいちゃん・おばあちゃんになっても


ずっと
ずっと
彼と私はそういう運命
そう胸を張って言える


だから、どうかアナタの心の中にも
同じような想いがありますように・・・








『ラヴシークレットルーム ~お医者さんとの不器用な恋』・・・【完結】