【Reina's eye ラストケース:お医者さんとの不器用な恋】



「驚かせちゃったよな。」


ふたりきりの小さなチャペル。
重なったままだった唇がほぼ同じタイミングで離れた後。
静寂に包まれ、シャンパンゴールドの光の下で抱きしめられた格好で彼に耳元でそう囁かれた。


『ちょっとビックリした。』


今朝、病院の屋上で修羅場だったことがもう随分昔の出来事だったように思えてしまう
それぐらい、今のこの幸せな状況にふわふわしている私がいる

もしかして、彼もそういう状況なのかな?と確かめたくなった私は顔を見上げた。


目が合った瞬間、一瞬、目を逸らした彼。
それとは対照的に私を抱きしめる腕の強さは更に増す。


今まで兄妹という関係でいたのに
挙式を行う会場で、キスを交わし抱きしめて見つめ合うとか

そういう甘い空気が
照れくさい
けれど、手離したくない
彼のそんな葛藤が伝わってくる


それによっても今の私の幸福感は更に増すばかりで

『でも、すごく幸せ・・・』

その想いをこぼさずにはいられなかった。



そんな私に再び目を合わせてくれて、じっと見つめてくれた彼。

濃いブラウンの切れ長の、さっきまでの照れくさそうな感じが消えた彼の瞳は、私の言葉の真意をさぐるように私の瞳の奥を鋭く射抜く。

ここで目を逸らしたら、幸せという想いを誤魔化してしまうことになると思った私は、彼と同じように彼の瞳の奥を真っ直ぐに見つめた。


幸せなんだよ
本当に幸せなんだよ

ワタシのこの想い
彼にどうかちゃんと伝わって


その状態が暫く続いた後、

「祐希には申し訳ないけれど・・・・」

先に視線を外したのは彼。


顔も横に向け、小さくふっと息をついた彼は、

「今日はこのまま・・・帰さない。」

もう一度耳元に口を寄せ、そう囁き、私をひょいと持ち上げ、お姫様抱っこの格好で抱きかかえながら歩き始めた。