ラヴシークレットルーム Ⅰ お医者さんとの不器用な恋





「そうか、じゃぁ・・」

『じゃあ?』


私の願いが届いたのか、申し訳なさそうだった彼が私の目の前を覆っていたウエディングベールを捲ってくれた。
視界が広がった私の目には自然とうっすらと涙が浮かんだけれど、彼の言葉の続きが聞きたくて彼のほうに顔を見上げた。

さっきまで申し訳なさそうだった彼の瞳がまっすぐに自分のほうに向いている。
もう迷わない・・・そんな瞳で。


「もっと近くで、嘘を真実に変えさせてくれる?」

『もっと近く?』

「そう、ほら・・・」


こっちへ来いと大きく広げられた彼の両腕。
まっすぐに私を見つめながら頷いた彼のその胸にドレスの裾をふんでしまいそうな状況に構うことなく飛び込んだ。


「伶菜・・・」

しっかりと受け止めてくれた彼の手は、さっき触れた時とは比べ物にならないぐらい温かく、そして力強くて。


「俺と結婚して欲しい。」

『・・・・・・・・』


ダイスキな人の腕で強く抱きしめられた瞬間。
胸いっぱいになりすぎて、返事すらできない。
こうなるといいなと思うことは許されないとついさっきまで思っていたから。


ずっと一緒にいられる
ずっと傍にいられる
ずっと隣で笑っていられる
一緒に悩むこともあるだろうけど
この人となら前へ向かって歩める

だから迷うことなんてない
入江さんが出題してくれた設問への答はたったひとつ


「俺と結婚して下さい。」

『はい。』


耳元でもう一度プロポーズの言葉を囁かれた私。
今度こそはっきりと返答した瞬間、涙がこぼれ落ちた。


「伶菜・・・・」


ほっとしたような穏やかな声で私の名を呼んだ彼のほうを見上げた瞬間。
また私の目から涙がこぼれ落ちそうになった。

彼はすぐさま親指で私がこぼしかけた涙を掬い上げながら、私の唇にそっとキスを落とした。
キスのその感触のせいで私は今まで感じたことのない幸福感に包まれた。


『本当に・・・本当に幸せ。』


それを噛みしめるように私達は十字架の前で誓いのキスをかわした。
ずっとずっと、永遠に手を重ねながら一緒に生きていく
その誓いを胸に抱きながら・・・