ラヴシークレットルーム Ⅰ お医者さんとの不器用な恋




「幼い頃、俺達は兄妹として育った。」

『・・・・・・・・』

「親父の死後、俺達は生き別れ状態になった。けれど、偶然、ああいう形で再会して、お前の主治医になった俺は兄という立場も消して主治医という立場に徹しようと思った。」


呆然としている私にちゃんと事情を説明しなければと思ったらしいお兄ちゃんはそう言いながら、初めて繋がり合った空色のパズルを指でそっと撫でる。


「でも、主治医でいられない状況になって、お前との接点がなくなるとわかった時、俺は兄という立場にすがるしかなかった。今頃になって言い訳するとか、ズルイよな・・・」


前方の壁に掲げられている大きな十字架を見上げながらそう呟いた彼の横顔。

それは私に対する申し訳なさみたいなものが伝わってきて、
見ているこっちが胸が痛くなる


『・・・そんなことない。それで私は助けられたのに。』

「だから、兄という立場でずっといるつもりだった。医師免許申請時に手にした戸籍謄本で兄妹ではないことを確信しても。そうやって大切にする方法もあるって。」


彼の言葉通り、私は妹として大切にしてもらっていた
それとともに、幸せな時間、空間まで与えてもらっていた


「だから、お前の婚約者が現れて、彼の元へお前が行くことも受け入れようと思った。それがお前にとって一番幸せな方法なら仕方がない・・って。」


その想いって
私がお兄ちゃんの幸せを優先して、お兄ちゃんから離れようと思った想いとかなり似ているような気がする


「でも、引越しの日である今日という日・・・・俺は自分の気持ちに嘘をつけなく
なった・・・お前が俺の元から居なくなることなんてもう、考えられないって。」


見ていた十字架から視線を移動させ、私の瞳を真っ直ぐな瞳でじっと見つめながらお兄ちゃんが紡いだ彼の今の気持ち


それに嘘はない
多分、彼の本当の気持ち
そんな気がする