ラヴシークレットルーム Ⅰ お医者さんとの不器用な恋




「伶菜。」

『・・・えっ?』

「ここに、お前の名前、書いてくれる?」


そう言いながら、相変わらず緊張した表情のままのお兄ちゃんは
私が台の上に置いておいた白い紙をおもむろに開く。

ついさっき、砂浜でオルゴールを開けた時に一瞬だけ目にしたはずのそれを覗きこんだ私。



『これって・・・』


驚いた表情で彼を見上げた私の頭の上には、ウエディングベールがふわりとかけられた。


『似合うな。』

ダイスキな彼の優しい声が体全体に浸み込む。
そして私は、自分の左手に握らされてしまっていた白い紙を再び広げる。


その白い紙。
それは既に日詠尚史と彼らしい達筆な文字で書き込まれていた・・・婚姻届だった。


『知っていた・・の?私と血が繋がってないってことを・・・』

「・・・・ああ。」

『知ってたん、だ・・・・・』

「・・・・ああ。」


目を閉じ、私達の間に血の繋がりがないという事実を知っていたことを肯定する返事をしたお兄ちゃん。
それを耳にして呆然とせずにはいられない私。
その事実を私に教えてくれた東京の日詠先生はお兄ちゃんには伝えていないって言っていたから。