お兄ちゃんが口にした ”お前に渡したピース”
それは出産直後の私にベビーシューズとともに届けてくれた1つのピース。
それは “your baby” と刻印されていたピース。
もしかして、このピース達と私が持っているピース達繋がるんじゃ?
でも私が持ってるピースは車の中の鞄の中にあるし
凄く気になるけれど、今、ここでそれを確かめるのは無理そう
それにお兄ちゃんがどういう目的でこれらを私に渡してくれたのかもわからないし
「もう真っ暗だ、かなり冷えてきているし・・・行こう・・・」
私は返事をすることのないまま彼に手を引かれ、真冬の冷たい潮風に身体を震わせながら車に乗り込んだ。
しかも、ドレス姿、頭には白衣がかけられたまま。
右手にはオルゴールの中に入っていたあのジグソーパズルのピース達を、そして、左手には小さく折り畳まれた白い紙を握ったままで。
今日いろんなコトがありすぎてもはやキャパシティーオーバー気味になり始めていた私。
本当はまだ自分の頭の中にある ”なぜ?” を解決していかなきゃいけないのに、助手席に再び腰掛けた瞬間、疲れがどっと出たせいか、充電切れした電池のように思考が止まった。
そのせいで、その白い紙に何が書かれているのかを確認したり、
そして
手の中に握ったままのパズルのピースと鞄の中にある自分の名前と “your baby” と刻印されたパズルのピースを嵌め合わせてみる余裕なんてどこにもなく、
彼が運転するクルマに揺られながら、ぼんやり前を見つめることぐらいしかできなかった。