「・・・・・・・・・・」
私のほうをじっと見つめてるけれど何も言わないお兄ちゃん。
『ねえ、入江さんは?』
私は今ひとつハッキリしない様子のお兄ちゃんを急かすようにそう問いかける。
「・・・帰った。・・っていうか・・・」
『っていうか・・・なんで帰っちゃったの?』
「・・・・キレイ、、、だな・・・・」
入江さん達が帰ってしまった理由を尋ねているのに、呆然とした表情でぎこちなくそう呟いたお兄ちゃん。
『っていうか、なん』
入江さん達が帰った理由を彼に追及しようとしたその瞬間。
「伶菜、目、閉じて。」
『・・・えっ、こう?』
お兄ちゃんに言われるがまま目を閉じた直後、かすかに薬品らしき匂いと私のスキな柑橘系の彼の香りが入り混じりながら、潮風に乗って私の鼻をくすぐる。
そして、私の頭の上からなにかふわりとかけられたような感触を覚えた。
もしかして白衣?
お兄ちゃんの?
なんで頭の上から?
白
頭のてっぺん
てっぺん・・・
・・・・・ウエディングベールの代わり?!
私が自分の頭の上からかけられた白衣を両手で握り締めたその時、
「コレは俺から・・・・入江さんみたいに気が利かなくて、ゴメンな・・」
私の胸元には若干色褪せている木製の箱が差し出された。



