『なんでこんなモノを入江さんが私に?』
とりあえず落ち着こうと手に取っていたドレスを箱に戻そうとした時に、私はメモ書きらしき白い紙を見つけた。
今度はそれを手に取って目を通した。
そこには
【下記の問題に答えよ。
「メスさばきの腕は確かだが恋には不器用な男の手を、もう離さない方法をこの箱の中に入っているモノを用いて証明せよ。」
(2019年 Irie 出題)】
【伶菜さんへ
ベールは彼に貰ってくださいね☆ 本当はマリアベールがオススメですけど、緊急だから・・とりあえずドレスだけってコトで。お幸せに♪ 高島 茜】
数学教師らしい入江さんのメッセージ。
そして、そんな彼によるいきなりの呼び出しにも応じてしまう人の良さそうな高島さんからのメッセージも書かれていた。
私は待たせている今の状況でのんびりしているわけにはいかないと、急いで濡れて重くなった衣服を脱ぎ捨て、そのドレスをトイレの床面に引きずらないよう慎重に扱いながら身に纏った。
『・・・・・・どういうコト?』
このドレス
ノースリーブでマーメイドラインの裾のスタイルのモノで・・・私の身体にピッタリとハマってる
なぜ私の身体にピッタリなサイズを用意できたんだろう?
それになぜ
こんなメッセージを二人揃って私にくれたんだろう?
お兄ちゃんと私は兄妹で
しかも、彼は私と血が繋がってないコトを知らないんだよ
なのに、なんで・・・・?
頭の中の疑問を拭いきれない私は彼らが待っているであろうその場所へおぼつかない足取りで向かう。
海と空の境目が淡いオレンジ色に染まり、沈み始めている夕日がよく見えるその場所。
そこに待ってくれていると思っていた入江さんと高島さんの姿はもうなく、白衣を肩から羽織ったお兄ちゃんの立ち姿しか見当たらなかった。
『お兄ちゃん・・・入江さん達は?』
ドレスの裾を上げたまま彼のもとに駆け寄る。



