なんだろう?
そんなに重くないこの箱
でも、着物でも入っていそうな箱だよね?

私が受け取ったその箱の蓋を開けようとした瞬間、


「ここで開けちゃダメ!!!!すぐそこのトイレで開けて、着てみて・・・さあ、早く・・・」


私は高島さんに自分の手をそっと制止され、すぐさまトイレの方向に背中を押された。


「なんだよ、アレ・・・」

また機嫌が悪そうな声で入江さんに突っかかるようなお兄ちゃん。



「あ~あれね・・・・どうせ日詠は準備不足かと思ってさ。コレも出世払いな・・・っていうか既にお前のほうが俺よりもいい稼ぎがあるけどさ。」

入江さんはお兄ちゃんのそんな態度にも臆することなく、一枚のカードらしきモノを人差し指と中指に挟んで、お兄ちゃんの目の前に差し出した。


「なんだよ・・・コレ。」

眉間に皺を寄せながら入江さんの指間からそのカードらしきモノを抜き取るお兄ちゃん。


「コレも、出世払いな。」



入江さんはまたもやニヤリと笑う。


私がお兄ちゃんの手の中にあるカードが何なのかと覗き込もうとしたその時

「ハイ、伶菜さんはこっち!」

高島さんにトイレの方向へ背中をぐっと押されてそれを見ることができなかった。
衣服がズブ濡れで重くて仕方なかったけれど、背中を押された勢いでなんとか歩き始めた私。
後ろにいた3人はなぜか黙ったままで、なんとなく背中越しに視線を感じていた。


そんな中、私は後ろ髪をひかれながらもトイレへ行き、慎重にその箱を開け、中に入っていたモノを取り出した。

それは上品な艶感のあるパールホワイトカラーのロングドレスだった。