「・・・・・・・・・」
呆れた様子で入江さんの様子を冷たい目で見ているお兄ちゃん。
「俺と真里さん、メル友ってヤツだしね・・・」
メル友?!
真里と入江さんってそんな仲なんだ
てっきり入江さんは
ずっと想い続けていたという綾さんという女性にしか心を動かされないと思ってたのに
それに、真里からも入江さんとそんな仲になったって聞いてない!!!!!
そういえば、私の引っ越しの荷物を移動するときにお兄ちゃん以外にもう一人男の人がいたって言ってた。
それ、入江さんだったのかな?
も~う、真里ってば、
普段、”日詠先生経由でいい男紹介してよ” って挨拶代わりに言ってくるのに、ちゃっかり入江さんと仲良くなっているなんて
親友なのに、なんか寂しいじゃない
「へえ~、入江先生、メル友になるような女性とかいるんですね・・・」
あれっ、誰?
女の人の声もする。
誰?
「まあね・・・」
特に慌てた様子もなくそう答えた入江さん。
「私は未だに蒼井のコトを気にかけてると思っていたのに・・・」
「・・・・・真里さんは、別にそういう人じゃないよ。」
そうだよね・・・
真里も特に入江さんのコト、何も言ってなかったモン
じゃあ、真里と入江さんって男女の仲ではない関係で
ということはこの女性はもしかして
『あの~アナタは、もしかして綾さんですか?』
アハハハハっ
黒髪をポニーテール風に結っており、何かスポーツでもやってそうな活発に見える女性。
その女性は手を煽ぐように大きく振りながら、遠慮することなくお腹を抱えて笑った。
「綾さんって・・・蒼井のコトですよね?」
その女性は入江先生のほうを向いてそう尋ねる。
「ああ、そうみたいだな・・」
苦笑いでそう答える入江さん。
綾さんじゃないんだ・・・
そうだよね
叶わなかった想いの相手が今、一緒にいるわけないよね
呆然としながらその女性を眺めてしまった私。
「自己紹介遅れまして・・・私、入江先生の教え子で、今は同じ高校で数学教師をしています高島 茜って言います。私が綾さんではなくて、彼女の先輩なんです。」
『すみません・・私・・・』
「そんなに気にしないで。今日は突然、入江先生にコレを見繕うように頼まれて持ってきたんです・・・アナタにって。」
『・・・入江さんが?』
「そう。理由は入江先生に直接お聴き下さい。私もしっかりとは聴いてないので・・・」
高島さんはそう言いながら、平たくて大きな箱をズブ濡れの私に手渡してくれた。