【Reina's eye ケース53:未来予想アイテム】



「・・・・ったくこんなところまで・・・」


お兄ちゃんを追いかけて、湖の浅瀬で転んだ私。
彼は全身ズブ濡れになった私を抱きかかえたまま、慎重な足取りで砂浜まで歩き、私を地面に降ろしてから吐き捨てるように呟いた。


「だって、ここ浜名湖だぜ。俺にもわざわざご挨拶しに来たかと思ったよ。」


その声の主は入江さん。
彼も珍しく意地悪な口調。


「ダメだろ?女性の身体を守るのが産科医師の大事な仕事なのに、伶菜さんをこんな目に合わせるなんて。」

『入江さん、違うの・・・私自身の不注意で・・・』

紳士的なイメージのある入江さんなのに、これまた珍しくお兄ちゃんをギロリと睨み付けた。



「そうです。俺の不注意。」

お兄ちゃんは言葉とは裏腹に入江さんを睨み返す。

なんか、また今日は何かが起こりそうなそんな予感がします




「そうは言うものの、コイツは何考えてるかわかんないからな・・・なんてったって策士だからね。」

そう言いながら突然ニヤリと笑った入江さん。


「それにしても、なんでここに俺らがいるってわかったんですか?」

相変わらずムスッとした表情のお兄ちゃん。


入江さんと連絡を取り合っていたわけじゃないんだ
だったらなんで、私達がここに来るってわかったんだろう?



「俺も緊急連絡網の枝の一部だからね・・・日詠さんちの緊急事態のね。」



緊急連絡網?!

緊急って・・・
そういえば真里も国際緊急コールで呼び出されたって言ってた


とういうことは、もしかして


『真里から聞いたんですか?』

「伶菜さん、正解。どこに向かったかはわかんないって真里さん言ってたけど、もしかしてここかなって。」

『・・・・・ここって・・・』

「いつか、またここに来てこの景色を見せてやりたいって呟いていたから・・・ソイツはさ。」

入江さんは勝ち誇ったような笑みを浮かべてお兄ちゃんを指差しながらそう教えてくれた。