ラヴシークレットルーム Ⅰ お医者さんとの不器用な恋





「護師・・・薬剤師・・・OL・・・教師・・・・・女医?・・・看護師?それとも薬剤師?」

『伶菜、それ、新しいお経か?』

「あっ?!」


でも、俺の ”またな” の意味を

「お兄ちゃん、本命はどの人なの?」

伶菜がどう捉えているかはかなり微妙だけどな

それに俺の本命の人を探るとか・・・どこまで自覚がないんだ?


彼女は俺の事をシスコンと捉えているわけだから
そんなことをするのは仕方がないことなのか?

しかも、教えてくれてもいいじゃんなんて、なんで開き直るんだよ

確かに、自分の本命の相手は誰かなんて口にしたことないけど
それでも、公の場で手を繋いだりしたりして、態度では伶菜のことを大切に想っているようなことを示してきているはずだ

それなのに、伶菜ときたら・・・あまりにも鈍すぎるだろ?

おまけに黙ってしまっているってことは
また変なコトとか考えているだろ?

でも、鈍すぎるからって、お前が今、知りたがっていることなんて簡単には教えてやらない




『伶菜、しっかり前、見てろよ!』


そのかわり、今から
やっぱり言葉で想いを示すこととかが苦手な俺が

「すごーーーーい!!」

俺なりのやり方で、お前が知りたがっていることを
嫌という程、思い知らせてやるから


この時はそこまで強気だった俺。

薄暗いトンネルを淡い光が射すほうに向けて車を走らせ、眩い光に目を細めた瞬間、眼下に広がったスカイブルーカラーの染まった世界。
それがいったい何なのかを把握した伶菜は今日一番のはしゃいだ声を上げる。



今日一番どころか、ここ最近、こんな元気な声とか聞いていなかったような気がする
引越しとかで忙しかったことせいもあるだろう
新生活を前にして緊張感もあったせいかもしれない


俺がそんなことを思っているなんて露知らずであろう伶菜が、少しでも海が見えるようにと前のめり姿勢になっている様子が運転中でも視界に入る。

彼女のそんな子供みたいな行動。
もし、伶菜が物心が付いたばかりの年頃でもこういう行動しそうだと俺はこっそりと笑みを浮かべる。



『日が暮れる前に、間に合ってよかったよ・・・』

「えっ?もしかしてここに来たかったの?」

『ああ、ここな。正確に言うとここにもな・・・潮見坂。』

ここまで喜んでくれていることにも嬉しさがこみ上げる。
この景色もいつか伶菜に見せてやりたい景色のひとつだったから。