ラヴシークレットルーム Ⅰ お医者さんとの不器用な恋




『・・・・・・・・・・』

ひとり黙ってまたまた妄想中の私。
その間も車は国道一号線に入り、東京方面に向かって走っていた。
トンネルに入り目の前が暗くなってもまだ妄想していた私。



その時

「伶菜、しっかり前、見てろよ!」

えっ?

何??





う・・・・わぁ





空に車が突っ込んだかと思った
海なんだ

電灯が点いているけれど少し薄暗いトンネルを抜けると下を見下ろす格好になっている視界。
そこには、眩い光とともに、青い空と広い海が私の視界をいっぱいいっぱいに埋め尽くす。


『すごーーーーい!!』


海風によってゆらゆらと揺らめく波打ち際。
遠くにはゆっくりと航行している大型タンカー。
カモメらしき海鳥が低い高度でふわりふわりと飛んでいる。


絶景・・・その一言がピタッと当てはまる。




「日が暮れる前に、間に合ってよかったよ・・・」

ハンドルを握ったままのお兄ちゃんからこぼれる安堵の声。



『えっ?もしかしてここに来たかったの?』

絶景やら感動という言葉に、意外という言葉もふと浮かんだ私は彼にそう尋ねずにはいられなかった。


「ああ、ここな。正確に言うとここにもな・・・潮見坂。」


そう言っている間にもクルマはどんどん前進している。
さっきまで前方に見えていたはずのあの青く広い空と海の景色が、いつのまにか反対車線のクルマの列によって見えなくなってしまった。


でも、もうこの絶景で充分お腹いっぱい

でもまだあるんだよね?
お兄ちゃんの行きたいところ

未来の義理のお姉さんになる人のところだよね?


でもなんのために
今、この絶景を私に見せてくれようとしたのかな?


なんのために?

”これもな” ってさっき彼は言っていたけれど
それに向かってこの先、まだ走るのかな?