「あ~、さすがに疲れたな・・・屋上から駐車場までダッシュするのは・・・」
若干息を切らしながらそう言い、ようやく手を離してくれたお兄ちゃん。
手を離された私は、若干どころか肺がグシャっと潰されたかと思うぐらい呼吸困難な状態。
「大丈夫か?」
お兄ちゃんは崩れかけていた私の身体をふわりと支えながら、彼の車の助手席のドアを開け、私をそこへ座らせてくれた。
「呼吸器科の小倉先生に診て貰うか?今日、確か外来診察しているはずだから。」
えっ?
また、あのザワザワと噂話が彷徨ってるところに戻るの?
「俺が運んでやるから、歩かなくてもいいぞ。」
えっ?
もしかして抱きかかえられて、まだざわざわしているかもしれない外来エリアに戻るの?
私、今度こそ自分の命なくなるかも・・・
日詠ファン?の女性達にきっと、私、暗殺されちゃったりする?!
『・・・け、け、結構ですっ!』
息苦しいから必死の思いで頬をプゥと膨らまして拒否する私。
「お前のそういうところも、ス・・・」
バタン!!
いきなり勢いよく閉められた助手席のドア。
まただよ、いつもこう
語尾、聞こえないんだよね
『えっ、今・・・なんて言った?最後のほう、聞こえなかった!!!』
私はすぐさま運転席に乗り込み、今にもクルマのエンジンをかけようとしているお兄ちゃんにそう訴えた。
眉尻を下げてちょっと困ったような顔の彼。
少年のような屈託のない笑顔が一番スキなんだけど
そういう顔も、嫌いじゃない
「お前のそういうところ・・・・ス・・・・いや、す・・ごく・・・・そうそう凄く、面白いって言ったんだよ!」
『な~んだ・・・面白いって失礼だよ、お兄ちゃん!』
「・・・・お兄ちゃん・・・・ね・・」
相変わらず、困ったような顔をしてる彼。
『何?』
やっぱり今日の私は訳がわかってないかも・・・
「なんでもない。そろそろ出発だな。」
勢いよくエンジンをかけてそう声を上げたお兄ちゃんの顔にはやっぱりニヤリと意味深な笑みが戻っていて、窮屈そうに白衣を脱いでからアクセルを踏んだ。



