「・・・福本さんの言う通り、見つかるとやっぱり面倒臭いから走るぞっ!早く行かないと!」
さっきの福本さんみたいにニヤリと何か企んでいるような笑顔を覗かせたお兄ちゃん。
『ラジャ♪』
私も彼に負けないぐらいのイタズラっぽい笑顔を返した瞬間、私とお兄ちゃんは同時に走り始めた。
屋上から階段を駆け降りて、病棟をすり抜けて、更に階段をフラフラしながら降りた。
息、止まりそう
白衣を脱げばとりあえず目立たなさそうなのに
お兄ちゃんはかなり急いでいたせいか、それを脱ぐことなく
私の手を離せば、もっと早く走れそうなのに
それも離そうとすることなく走り続けていた。
ザワザワザワッ・・・
「日詠先生、その人・・・誰ですか?!」
「誰、誰・・・あの女の人?」
「えっ、嘘?!・・・あれ、日詠センセ?!・・嘘。やだーー。」
多くの患者さん達や病院職員が行き交う1階の外来診察フロアに差し掛かる辺りで聞こえてきた声。
ひそひそ声に、叫び声のようなものまで。
そういえば
この人、お兄ちゃんという人は背が高い上に、端正な顔立ちもあってただでさえ目立つのに
その人が白衣姿のまま女の人の手を引っ張って走っていたら周りがザワつくのは当然
だってダンナさまのいる妊婦さんでさえも外来診察室から出てくるとちょっぴり頬を赤らめている人が多いんだもん
私もそうだったし
そんな人に手を繋がれてる私も今、かなり注目されてる?!
“私、彼の妹です!” って言っても
この移動速度じゃきっと、皆さん聞き取れないだろうし
妹と手を繋いでるって知られたら
”日詠先生、シスコン?!” という噂話が広がっちゃうし
やだ、どうしよう
もう私、この病院に来れないよ
祐希の検診に来なくてはならないのに



