「アナタは日詠クンの何を見てきたの?」
「先輩・・・・・どういうコトですか?」
「本当に日詠クンのことが好きならば、彼の瞳には誰が映っているのかわかるはずでしょう?・・・彼と付き合っていた女性誰もが、その人には敵わないことに気がついて彼から離れていったのをアナタも知ってるでしょう?」
自分の心の中にずっと伶菜が居続けていたこと
俺はそのことを福本さんだけじゃなく、どうやら奥野さんにも見透かされていたようだ
「だったら、正々堂々と・・・医師という立場で “ウチの病院に来て” と彼を説得しなさいよ!」
「・・・・・・・」
「でも簡単には彼は渡さない・・・彼はこの病院に必要な人物・・・私にとっても仕事をしていく上で医師として最高のパートナーなんだから・・・そんな彼をアナタには渡さない。医師として勝負しなさいよ!」
それだけでなく、こんな時なのに
尊敬している医師のひとりである奥野さんにこんなことを言われている
福本さんに至っては、差し出した退職届を奪い取られ、ビリビリと大きな音を立てながら破り捨てただけでなく、伶菜に俺とふたりで話し合うように勧めることまでしてくれたりする
「さて、日詠先生~。今日の午後からしばらく臨時休暇ってことで。院長には私から言っておくから・・・・・帰ってきたらしっかり働いて貰うから、心置きなくいってらっしゃい♪」
俺には、お前はこの病院に居て当たり前みたいな空気まで齎してくれたりもしている
なんで彼女達は
伶菜と駆け落ちをしようとして、その上、伶菜の婚約者である佐橋さんを殴るという非常識なことをしでかした俺を肯定するようなことをするのか?
そして、なぜ、伶菜に俺と話し合うように勧めたのか?
それはきっと
俺という人間、そして伶菜のことをも熟知している彼女達だからこそ、
俺がどうしたら俺らしく、そして伶菜が彼女らしくいられるのかを教えてくれているだからだろう
俺が俺らしく居る
それは、今まで通り、伶菜の傍に居てこの病院で自分の信念を貫くこと
それなんだろう・・・
そして、それだけではなく、
伶菜が彼女らしくいられること
それは、もしかしたら、伶菜の意志だけに委ねることではなく、
俺の想い
俺の意志
俺の決断
それらをきちんと彼女に伝えることが必要
彼女達が俺に教えてくれようとしていることはきっと
そういうことなんだろう



