【Hiei's eye カルテ51:仕組まれていた罠】
「そうこなくっちゃね、ナオフミくん♪」
俺の自宅の合鍵を返しに来た佐橋さんの傍に居た伶菜の手を引いた屋上。
そこで聞こえてきた拍手の音。
その直後に俺達の前に現れたのは、
俺の行動を肯定するような言葉を口にしている福本さん。
そして
「なんとか間に合ったわ。福本さん、あと1時間早く連絡くれればもう一便早く帰国できたのに・・」
伶菜の親友の杉浦さんだった。
伶菜、そして祐希とともに、今のこの状況から逃げ出してしまおうと思っていた
彼女が自分ではない男のところへ行ってしまう前に
俺が病院の政治的な問題を解決するために、愛してはいない女と結婚させられる前に
俺達のことなんか誰も知らない
そんなどこかへ
そうすれば、伶菜とこの先、ずっと一緒にいられる
そんなことを考えて、彼女の手を掴んだ。
でも、俺達はその行く先を阻まれた。
俺達のことを大切に想ってくれている人達に
俺がしようとしていることは間違っていると阻まれている
・・・・一瞬、そう思った。
でも、それは
「放して下さい、奥野先輩!」
「アナタが自分の口からちゃんとここで全てを話せば、この手を放してあげるわよ。それまでは放さないから」
その直後に姿を現した奥野さんと三宅によって、福本さん達が俺と伶菜の行く手を阻んでいたわけではないような気がした。
伶菜と佐橋さんと俺の3人で、これからのことについて決着をつけるはずだった。
それなのに、そこに加わった福本さん、杉浦さん、そして、奥野さん、三宅という存在によって、
「どういうコト・・・ですか?」
『どういうコトだ?三宅。』
俺達3人だけの問題ではなさそうだと感じずにはいられなかった。