康大クンを信じて彼についていこうとしていた私。
それが真実でないことを心の中で祈りながらカレに問いかけた私。
それなのに、その願いをガラガラっといとも簡単に崩すように康大クンは豪快な笑い声を上げた。
「そうだよ・・・伶菜。」
笑いが収まらない様子のカレ。
「だってさ~。突然、この女の人から電話がかかってきて・・・その人がどうやら伶菜に探偵をつけていて俺まで捜し出されたらしくってさ。」
私に探偵を?!
それで康大クンまで捜し出されたの?!
「で、1ヶ月以内にキミと結婚できたら、成功報酬として500万円!!!しかも、後にキミのお兄さんとその女の人が無事結婚できたら、それに上乗せ500万円!!!・・・・しかもその後だったらキミと別れてもいいという破格の条件付きでね・・・・」
『・・・・・・・・』
さっきのお兄ちゃんみたいに私も言葉を失う。
お金
それが私の知らないところで動いていたんだ
「そんな大金・・・普通のサラリーマンが簡単には手にできないし、いくら大手の生命保険会社にいるからってこの不景気だからいつ会社が傾くかわかんないしね。」
『・・・・・・・・・』
そうだ
この人、もともとお金が絡む仕事をしていたんだ
それにこの人
付き合っていた私に、他にも付き合っている彼女がいるって言って別れた人だった
「こんないい話、飛びつかない訳には、いかないだろ?」
『・・・・・・・・・・』
そうだ、この人
私のキャリアアップに響くからと・・・私を自分の転勤先の仙台に連れて行かないようにするために、他にも付き合っている彼女がいるからって別れを切り出したって言ってたけれど
それは嘘だったんだ・・・
「だから、この女の人の話に乗ったんだ・・・キミにはこの事実を隠し通せると確信してたんだけどな・・・以前、俺がついた嘘にもまんまとひっかかったからね・・・」
『・・・・・・・・・』
「でもついさっきまでは俺のコト信じてくれてたんだ・・・そういうトコ全然変わらないね、伶菜はさ。」
やっぱり、嘘だったんだ
私、アナタがあんなに一生懸命に結婚しようって言ってくれたから
アナタが私を名古屋に置き去りにした理由を信じたんだよ
というか
私、カレの言う通りも全然変わっていなくて
進歩してないんだね
私、ホント・・・バカだ
『・・・・・・・・・・』
涙が静かに頬を伝い始めた姿を誰にも見られたくなくて俯いた私。
その直後。
ビシッ!!!!!!
「ナオフミくん?!」
「日詠先生!!」



