ラヴシークレットルーム Ⅰ お医者さんとの不器用な恋



「どういうコトですか?・・・お兄さん。」

佐橋さんは困惑気味に俺にそう問いかける。


こういう流れになることは想像できていたはず。
それなのに返答が出てこない俺は、受け取るわけにはいかないはずの伶菜の手から滑り落ちたキーホルダーを拾う。

手にしたキーホルダーから伝わるあたたかい感覚は、伶菜の手によって温められていたもの。

それに触れた俺はようやく腹を決めた。


『ただ・・・俺の気が進まないだけなんだ。』


彼女を手離したくないという自分の気持ちを
彼らの前で(さら)け出すことを。


「それは、僕になにか落ち度があるから・・・なんでしょうか?」


ただ、それをすんなり理解してもらえるわけがないこともわかっている
伶菜にだって理解してもらえないことも・・・

しかも、彼に落ち度があるとか、俺の頭の中ではそんなものはない


じゃあ、何が問題なのか?


『・・・キミに落ち度があるわけじゃなくて・・・』

「じゃあ、なぜ?今頃・・・」


それは

『・・・・・キミ以外でも、それがどこの誰であろうと・・・気が進まない。』

「・・・・・・・・・」

『ただそれだけなんだ。』


俺自身の気持ちの問題

彼女の傍で彼女の笑顔に触れていたい
今までもこれからもずっと変わらずに

その想いを切り捨てることができない自分自身の問題なんだ・・・