「どういうコトですか?・・・お兄さん。」
佐橋さんは困惑気味に俺にそう問いかける。
こういう流れになることは想像できていたはず。
それなのに返答が出てこない俺は、受け取るわけにはいかないはずの伶菜の手から滑り落ちたキーホルダーを拾う。
手にしたキーホルダーから伝わるあたたかい感覚は、伶菜の手によって温められていたもの。
それに触れた俺はようやく腹を決めた。
『ただ・・・俺の気が進まないだけなんだ。』
彼女を手離したくないという自分の気持ちを
彼らの前で曝け出すことを。
「それは、僕になにか落ち度があるから・・・なんでしょうか?」
ただ、それをすんなり理解してもらえるわけがないこともわかっている
伶菜にだって理解してもらえないことも・・・
しかも、彼に落ち度があるとか、俺の頭の中ではそんなものはない
じゃあ、何が問題なのか?
『・・・キミに落ち度があるわけじゃなくて・・・』
「じゃあ、なぜ?今頃・・・」
それは
『・・・・・キミ以外でも、それがどこの誰であろうと・・・気が進まない。』
「・・・・・・・・・」
『ただそれだけなんだ。』
俺自身の気持ちの問題
彼女の傍で彼女の笑顔に触れていたい
今までもこれからもずっと変わらずに
その想いを切り捨てることができない自分自身の問題なんだ・・・



