ラヴシークレットルーム Ⅰ お医者さんとの不器用な恋



どういうコト?
私を行かせてやれないって、既に荷物まで運び出してるのに
・・・どういう


「どういうコトですか?・・・お兄さん。」


私が口にしようとしていたこと。
それを康大クンが先手を打って口にする。

彼に問い詰められる形となったお兄ちゃんはおもむろに立ち上がり、私が落としてしまったあのキーホルダーを拾う。
そして、再び彼の方を向き直し、ようやく口を開いた。


「ただ・・・・俺の気が進まないだけなんだ。」


えっ?
気が進まないだけって・・・・


先週の土曜日、康大クンに対して
丁寧な口調で “よろしく御願いします” って
言ってた・・・よね?

それなのに、気が進まないって・・・



「それは、僕になにか落ち度があるから・・・・なんでしょうか?」


怒りを(あらわ)にしてもいいようなことを言われているのに
康大クンは落ち着いた口調で彼にそう問いかける。


問いかけられたお兄ちゃんはというと

「・・・・・・・・・・・・」

やっぱり黙ってしまっていて。


なんとなく想像できた反応

だって、お兄ちゃんは
自分のワガママを誰かのせいにするような人じゃないから

でもなぜ気が進まないのか理由を言わないのは
康大クンも、そして私も納得いかないかも

だってお兄ちゃんと康大クンとのやりとりで
彼の落ち度なんてなにひとつ見つからなかったんだから


『お兄ちゃん、なんで?』


こういう時、感情的になりやすい私はできるだけ落ち着いた声を心がけながら彼に声をかけた。
でも、康大クンに向き合っているお兄ちゃんは私のほうを見向きもしない。



「・・・・キミに落ち度があるわけじゃなくて・・・」

「じゃあ、なぜ?今頃・・・」

そして、言い訳をしているような口ぶりではなく、至って冷静な口調で康大クンに話しかけた。
眉間にうっすらと皺が寄った康大クン。
彼の微妙に変化した表情に構うことなく、お兄ちゃんは真っ直ぐに彼の目を見て更に口を開いた。



「・・・キミ以外でも、それがどこの誰であろうと・・・気が進まない。」

「・・・・・・・・・」

「ただそれだけなんだ。」