『・・・どういうことですか?』

「伶菜ちゃんが三宅さんに・・・妹だからっていつまでも日詠クンの傍にいるな・・・そう言われた時・・・それと・・・」

『・・・・・・・』

「日詠クンの大切な人が奥野先生だったら、日詠クンから離れると伶菜ちゃんが言った時。」



三宅が伶菜に何か余計なことを吹き込んだことは知っている
けれども、伶菜が奥野さんにそんなことを言ったことは全然知らなかった

伶菜は俺が
奥野さんのことを異性という立場でスキだ
そう思っていたのか?



「伶菜ちゃん・・・なんでしょ?ずっと日詠クンの心の中に居続けた人は。」

『・・・・・・・・』

「学生の頃から、なんで日詠クンは恋愛に対して淡白なんだろうって思ってた。けどね、あの日、その理由がわかったの・・・」


学生時代から俺にとって何かと身近な存在だった奥野さん

彼女の言う ”あの日” はいったいどんな日なんだろう?



「伶菜ちゃんを大切そうに抱えてER(救命救急センター)へ飛び込んで来た姿を見てピンと来たの・・・・日詠クンの心を動かすのはきっと ”この人” なんだって。」


奥野さんが言う ”あの日”
それは、俺にとっても人生の分岐点となる日


「ずっと捜して、ずっと想い続けていたんでしょ?それなのに、いいの?このままで・・・・」


奥野さんが言う通り、俺は生き別れ状態だった伶菜を
ずっと捜していた
ずっと想い続けてきた


あの時、両腕で抱えた伶菜を
俺がずっと守らなきゃいけない
そう思った



でも、守られているのは
俺のほうなのかもしれない

伶菜のあの笑顔に
多分俺は守られている

優しさと強さが共存するあの笑顔に触れるたびに
俺の心はそれに惹かれていった


そして、その笑顔をずっと大切にしてやりたい
そんな想いも抱いている




「お互いに自分じゃなくて相手を大切にし過ぎている・・・伶菜ちゃんも日詠クンも。」


でも、伶菜が結婚したい相手が現れた今
それを担うのは俺じゃない


どんな方法でもいい
隣に俺じゃない人間が居ても
伶菜が幸せで居てくれればそれでいい

俺はそう思うしかないのに・・・



「だから、想いがすれ違っているのよ・・・想い合っているのに・・・・」