あまり心配をかけたくない俺が電話を切ろうとした瞬間、耳元で響く入江さんの大きな声。
『はい?どうしたんですか?まだ何か?』
「お前・・・・いいのか?」
『何がです?』
「だから、伶菜さんのこと・・・」
あと2日。
その2日が
48時間に近いあと2日なのか、24時間に近いあと2日なのか
どちらなのかはわからないあと2日。
「お前は・・・・・伶菜さんと離れても平気なのか?」
『・・・・・・どうなんでしょうね。』
「・・・・・・・・・」
そのあと2日という日に入江さんから聴かれた難しい質問。
俺はそれに対して他人事みたいな返答しかできなかった。
ついこの間、伶菜が ”気にしている” と言い放った相手でもある入江さん
高校の教え子であった綾さんをずっと想い続けていた彼とこれから佐橋さんと結婚する伶菜の間に何もないことは充分わかっている
それでも彼の人柄を熟知している俺は、それでも伶菜の心が惹かれてしまうのでは?とヒヤヒヤせずにはいられない
そんな相手である入江さんにこれ以上触れてほしくないという俺の狭い心の中を察したのか・・・入江さんは踏み込んだ質問をすることなく、また ”そうか・・” と呟いた。
そして、お互いにどこか消化不良気味のまま電話を切って、俺はまたいつもの生活に戻る。
『午後は・・・ハイリスク妊娠外来だったな。』
まずは仕事に集中。
いつも通り仕事をして、帰宅したら、祐希と遊んだり、夕飯時には伶菜と祐希の様子について話したり。
彼女からも俺からも
これからの話はナシで、”今” に集中。
そんないつもの生活を過ごしていて、気が付いたら、伶菜達と一緒に居られる時間は残り24時間を切っていた。
ピピ、ピピ、ピピ、ピピ
真夜中の自分の部屋で鳴り響いた携帯電話の着信音。
ベッドのヘッドボード上にあるそれを手探りで掴み、目が半分位しか開いていない状態で通話ボタンを押す。