【Hiei's eye カルテ49:想い合いすれ違い 】
伶菜と佑希がここから離れるまでの時間
イコール
”あと1週間”
頭の中には常にそれが居座っているものの
伶菜が自分達の荷物を少しずつまとめている以外は
俺達はいつもと変わらない生活を送った。
あと5日
あと4日
あと3日
自宅に居られる時間を探すのが大変な生活である俺にとって
1日単位という考え方よりも時間単位で捉えたほうがいいぐらい時間が流れていくのが早い
「もしもし、日詠?今、大丈夫?」
『あ、どうも。入江さん。休憩中なんで大丈夫ですよ。』
伶菜達がここから居なくなるまでのタイムリミットまであと2日。
入江さんから、以前頼んでおいたデータの解析方法の確認についての電話が来た。
「なんかお前・・・いまひとつ元気がないけど・・・何かあったか?」
『・・・別に何も。』
「嘘だな。お前の声、聞いてりゃわかる。」
『・・・・・・・・。』
学生時代からの長い付き合いのある彼。
隠し事はまず無理だ。
『・・・タイムリミットまであと2日。』
「は?なんだよ、それ。」
だから、それとなく元気がないと思われている要因を伝えたのだが、ワケわからないからちゃんと説明しろよと言わんばかりの返事が聞こえた。
『伶菜達がここから出て行くんです。』
「は?なんで?」
『結婚するから。』
「おめでとう。ようやく結婚するか・・・って、なんでお前、伶菜さんと結婚するのに、なんで別居するんだ?」
『結婚するの、俺じゃないんです。』
「・・・・・・・・」
ここまで問い詰めておいて、急に黙る入江さん。
今、俺が答えた現実が信じられないという様子が電話越しでも伝わって来る。
『そういうことでバタバタしているだけなので。』
「そうか・・・・・」
絶句状態のままでいると、自分が戸惑っている状況が伝わってしまうのではないかと考えた俺は入江さんに元気がないと思わせた理由を口にする。
バタバタして忙しいことが自分に元気がないせいなんだと。
『じゃあ、俺、そろそろ休憩終わりなので。』
「ああ・・・じゃあ、論文、頑張れよ。」
『ありがとうございます。それじゃ、ま』
「日詠!!!!!」