『でも自業自得・・・だよね。自分がそう仕向けたんだから・・・』
彼から・・・お兄ちゃんから離れるその日がすぐそこまで来て
ようやく自分自身で仕向けたことが
本当は自分にとって適切ではないのではないかと疑問を抱いた私。
でももう戻れない
康大クンまで巻き込んでるんだから、今更、結婚したくないなんて
言えない
康大クンと結婚するというコトは
自分の大切な人達が幸せを掴むために自分が決めたコトだから・・・
「マー」
手押し車で遊んでいたはずの祐希の頬が私の背中にピッタリとくっついていた。
もしかして泣いてる私を見てこの子なりに心配してくれたのかな?
『祐希・・・』
この子のためにも
この子に血の繋がった父親を作ってあげるためにも
私は
自分の決めたコトが自分にとっては適切な選択ではないことがわかっていても
それを押し通さなければならないんだ・・・
私は後ろを振り返り祐希をぎゅっと抱きしめ、必死にとめどなく流れていた涙を堪えた。
“母親は強し”
その言葉を何度も頭の中で反芻しながら。
そしてなんとか涙を堪えた私は祐希に向かってニッコリと笑いかけた後に荷物の整理を再開した。
ピピッ、、ピピッ、、、
私のデニムのポケットの中から聞こえてきた電子音。
【送信先】日詠 尚史
【題名】 無題
【本文】
やっぱり今日は帰れそうもない。明日も勤務になりそうだから引越し手伝えなくてゴメン。
そのメールが届いたことによって
彼と祐希と3人で囲むはずだった最後の夕食が2人きりになってしまった。
3人分作ったのに・・・食べるのは2人だけ
最後ぐらいはできたて温かいご飯を3人一緒に食べたかったな
また泣きそう
でも祐希が心配しちゃうからガマンだね
『さ、ごはん、食べよ~。』
私は無理矢理口角をグイッと上方に引き上げ祐希と向き合いながら夕食を食べた。
そして、帰って来る予定のないこの家の主の足音が聞こえてこないか一晩中気にかけながら一睡もすることなく、引越し当日の土曜日の朝を迎えてしまった。
寝不足でぽってりと腫れあがった瞼を冷たいタオルで冷やしながら朝ごはんを食べる。
そして、歯磨きを嫌がる祐希と格闘しながら彼の歯の仕上げ磨きをしていたその時だった。
ピンポーン
『あれっ?』
もしかして、今日も勤務のはずのお兄ちゃんが帰って来た?!



