ラヴシークレットルーム Ⅰ お医者さんとの不器用な恋




そのために俺は伶菜を信じる理由を丁寧に彼女に語りかけた。


「お兄ちゃん・・・」

それなのに、伶菜は顔を歪めながら俺を呼ぶ。
”お兄ちゃん、あのね・・・” と何かを訴えようとしている気配まで醸し出して。



さっきまで彼女に会っていたのは佐橋さんだった
だから、俺が帰宅してから、彼と何かがあったのか?
そう考えて、彼女にその旨を聴いてみたが、そうじゃないと首を横に振る。


「あのね、私・・・お兄ちゃんに聴きたいことがあるの・・・」

しかも、そう声をかけられたこっちの胸が変な音を立て始めそうな、そんな悩ましい声で。



伶菜が選ぼうとしていることを信じることで、彼女と俺のこれからの関係を受け入れよう・・・・そんな他力本願な想いを抱いていた

でも、伶菜は苦しそうに俺に何か意見を求めている



”妊娠したから結婚しなきゃと思って”

”本当にカレでいいのかって思うけど、でも・・”

それらは産科医をしている俺が診察中に、結婚前に妊娠したいわゆる ”できちゃった婚” をしようとしている妊婦さんから聴くことがある話だ



今の伶菜からは妊婦さん達がそういう話をする時のような空気を感じる

ということは今の伶菜の状況は
俗に言う・・・マリッジブルーってやつなのか?


『なんだ?』


もしそうなら、俺は彼女の想いに耳を傾けることしかできない
マリッジブルーならば、伶菜が佐橋さんとの結婚を真剣に考えているからこそそういう状況に陥っていると思われるからだ

そういう状況は、本人同士が向き合うしかない
外野が余計な口を出すべき事柄ではない

外野の俺には彼女と彼の間に割って入る立場なんかじゃない



だから俺は彼女の想いに耳を傾けるしかできないと思っていたのに、


「お兄ちゃんが・・・」

『・・・・・・・・・』

「アナタが好きな人は・・・・誰・・・ですか?」




俺の
初めてで
ずっと心の中で抱いていて
そして、多分もうすぐ終わるであろうたったひとつの大切な恋は

もしかして
俺の一方通行的な想いだけではないかのもしれない


『・・・・・・・・・・・』



もうすぐ彼女は他の男と結婚しようとしているのに
彼女が切ない声で紡いだその問いかけ
そして
俺に返答を急かす態度

それらによって
そんなことを思わずにはいられなかった。



だから、伶菜に告げてしまってもいいのかもしれない



守ってやらなきゃいけない存在だった彼女が

『・・・・お前・・・・の・・』

{お前のことが好きだ}

俺の心の中で愛しいという存在にもなっていることを・・・