ラヴシークレットルーム Ⅰ お医者さんとの不器用な恋



そのはずみで、舌を少々火傷してしまうというアクシデントも発生。
舌で感じた熱感の刺激が強すぎて、つい声を上げた俺に心配そうな顔で伶菜が駆け寄る。
いい年して舌の火傷ぐらいで声を上げるなんて情けないと苦笑いしながら、心配する彼女に大丈夫だと伝え、鍋に視線を移す。
すると、彼女も俺に釣られて鍋のほうへ目をやった。


「おいしそう♪」

大きくてくりくりしている彼女の瞳がキラキラしているように見えるぐらい嬉しそうだ。
作っておいてよかった・・・そう思わずにはいられない。



「美味しいです♪」

『だろっ?』


石狩鍋の具材が入った器を持ったまま、ほくほく顔で感想を言ってくれる彼女のせいでこっちまで嬉しくなる



自分で作った石狩鍋なのに、本当に美味く思えるなぁと自画自賛している時、

「あと1週間・・・」

『あと1週間がどうした?』

彼女が、聞こえるか聞こえないかのギリギリの声で呟いた ”1週間” をどうしても聞き流せなかった俺。


彼女が戸惑う様子を見て、聞き流すべきだったかもしれないと感じ始めた時、

「あと1週間でね、私・・・この家を離れて康大クンと一緒に暮らすことにしたの。」

戸惑いを吹っ切ろうとしているようなやや不自然に見える笑顔で彼女は1週間という言葉に繋がっている事柄を俺に説明してくれた。


ついさっきだったんだ
サヨナラまでの ”もうすぐ” がいつになるんだろう?という落ち着かない疑問を抱いたのは・・・

その答えなんてすぐには出ないだろう
すぐに出なくていいどころか、永遠に出なくてもいい
こっそりとそう思ったばかりなのに

”あと1週間”

それは具体的に聞こえてきた ”伶菜達がここに居る残りの期間”
それが自分にとってあまりにも短すぎることに
俺は密かに愕然とした。

そんな俺に、今の、聞こえてなかった?と確認してくる伶菜。


聞こえていなかったどころか
鍋が大きな音を立てて煮えてしまっていることを気にかける余裕がなくなるぐらい ”あと1週間” という予定を気にしている
とりあえず ”あと1週間” ということを承知したという返事をすることが精一杯

でも、実際は承知したわけなんかじゃない
その ”あと1週間” を自分の中でどう受け止めたらいいのかがわからない