『なんで?もしかしてお兄ちゃん、やっぱり男の人がスキなの?』
「は?」
『もしかして入江さんとか?・・・ダメだよ、入江さんは・・・綾さんっていう人が結婚したのを知って、その失恋からなかなか立ち直れていないみたいなんだから・・・』
もし、男の人がスキでも、入江さんはダメ
報われない恋
それが辛すぎるということを嫌という程理解しているから
「あのなぁ。なんでそういう発想にいくんだ?」
『えっ?』
あれ?
違うの?
「それに伶菜、なんで綾さんのこと知ってるんだ?」
『だって、この前、お会いした時に、お酒に酔ってた入江さんからちゃっかり聴き出しちゃったの・・・』
「珍しいな。入江さんが綾さんのことを言うなんて。」
『私も驚いたんだ・・・入江さんもクールな感じなのに、なんかカワイイな~って。』
「カワイイって・・・お前・・・」
さっきまでのお互いに探り合うような緊張感が張り詰めた空気。
それがいつの間にか、彼の眉間にクッキリと皺を刻ませてしまうような冷ややかな空気に変化している。
「入江さんのコトとか・・・気にしてるんだな。」
ちょっと入江さんのコトをちょっとからかうように言っただけなのに、そんなクッキリと皺を寄せるなんて
まさか、お兄ちゃん、本当に入江さんのコト、好きなの?
『そりゃ~、まあ、気になる。』
「いくら入江さんが失恋したからって・・・」
私は入江さんのコトが気になるんじゃなくて
お兄ちゃんが入江さんのコトをどう思っているのかが気になる
さっきは、それとなく否定してるようにも聞こえたけれど、実際はどうなんだろう?
入江さんも、お兄ちゃんも同性だからね
否定せざるを得ないのかな?
なんか複雑・・・
「・・・お前が入江さんに惚れるわけ・・・ないよな?」
『・・・・・・』
「伶菜はこれから・・・佐橋さんと結婚するんだからな。」
『・・・・・・』



