ラヴシークレットルーム Ⅰ お医者さんとの不器用な恋




『祐希のお守りもありがとう。』

「どういたしまして。さあ、食べよう。」

『頂きます!!!!!』

彼に誘われるがままに石狩鍋へ手を伸ばした私。



毎度のことながら・・・

『美味しいです♪』

「だろっ?」

目を細め、本当に嬉しそうな顔で同意を求めてきたお兄ちゃん。



この笑顔を間近で見られるのもあと1週間なんだ
この美味しいゴハンを間近でご馳走になるのも
彼が休日の時にこうやって食卓を一緒に囲むのも
あと1週間・・・


『あと1週間・・・』

「あと1週間がどうした?」


鮭を箸で摘んだままそう呟いてしまった私にそう問いかけた彼。
彼の顔からさっきまでの笑みが消えている。
しかも、心配そうな顔で私の様子を眺めている。


『あっ、えっと・・・』


今のこの幸せな空気を崩すようなことはしたくない
でも、ここで誤魔化しても仕方ない
いつかはちゃんと伝えなきゃいけないんだから


「あと1週間でね、私・・・この家を離れて康大クンと一緒に暮らすことにしたの。」

私は微妙に揺れている心を覚られないように懸命に口角をグッと上に引き上げ、彼にそう告げた。


急な話って驚くかな?

入籍は?とか 結婚式は?とか 新婚旅行はどうするんだ?とか
芸能レポーターのように聴いてくるのかな?

口数が少ない人だから、芸能レポーターみたいにっていうのはないか・・・


でも、静かな口調でも
ちゃんと大事なコトは聴いてくるよね?
だって、彼は心配性だから


勝手にそう予測しながら彼のほうを見ると彼は

「・・・・・・・・・」

私のほうではなく、グラグラと煮えたぎり始めていた石狩鍋のほうにその視線を向けていた。