ラヴシークレットルーム Ⅰ お医者さんとの不器用な恋





昨晩の俺の行動を知らないせいか、いつものような明るい笑顔で迎えてくれた伶菜に土産の紙袋を手渡す。

それを受け取った瞬間の彼女。
まずはその中身よりもお礼を言うことに気を取られている様子だったが、視線が紙袋の中に移ると一気に驚きの表情を浮かべる。
のち、本当に嬉しそうな顔をしながら、俺に夜勤明けで行列に並んだのか?と尋ねてきた。


『・・・ああ。・・・いや、その・・・まあな。』

「凄い行列だったんじゃ?なんで今日?」

『・・・いや、だから・・“並んで買って来い” って言われていたから・・・。福本さんに。』


伶菜の好きそうな菓子で、昨晩の自分の情けない行動を誤魔化そうとしている俺だったのに、見事に墓穴を掘ってしまったらしい。
結果、しどろもどろの返事と口からでまかせの行列に並んだ理由を伝えるハメに。


『・・・・・・・・・・』

「・・・・・・・・・・」


また情けない行動を繰り返す自分に思わず苦笑い。
そんな俺をじっと見つめて、神妙な面持ちを浮かべた伶菜。

何か勘付かれたのか?と緊張せずにはいられないこの状況をどうしたものかと思案しようとしたその時。
バームクーヘンの香りを嗅ぎ付けたのか、おもちゃで遊んでいた祐希が俺達のほうへ近付いてきて、その空気を一変させてくれた。


「お兄ちゃん、私も食べたい!」

『・・・そうだよな。紅茶でも淹れようか。』

「うん!」


そして、心の中で ”どうにか凌いだ” とこっそり溜息をつきながら、3人で甘すぎないバームクーヘンをストレートダージリンティーと一緒に食べ始める。
皿の上に置かれたバームクーヘンを手で掴み、ひと口で食べようとする祐希を慌てて制止する伶菜だったが、彼が少しずつ食べるのを見届けた彼女も安堵の表情を浮かべようやく食べ始めた。