「伶菜、とりあえずこんな感じでいいかな?」
手帳から破り取られたメモ用紙に書き込まれた “これからの予定”。
それらは全て康大クンが率先して意見を出して決めたこと。
カレのことがスキでスキで仕方ない状態で付き合っていた頃
結婚というものに憧れていた頃は、結婚式、新婚旅行の予定が未定という内容に対してきっと私は不満を抱いていたに違いないと思う
けれども、今現在はそうでもない
オトナになったからかな?
そう思い込まなきゃね・・・
『うん・・・いいと思う。康大クン、ごめん、そろそろ帰らないと祐希が昼寝から起きる頃だと思うから、いいかな?』
私は鞄を肩にかけて帰り支度をしながらそう言った。
「ああ、OK!また、なにかあったら連絡して。俺もなにか思いついたら携帯に電話するから・・・伶菜の携帯番号は変わってないよね?」
康大クンはシルバーのオシャレな名刺ケースから名刺を一枚取り出し、携帯電話番号らしきものをスラスラと書き込んでからそれを私に渡してくれた。
『うん。変わってないよ。それじゃ、あっ、お会計・・・』
私は受け取った名刺を右手に持ったまま左手で鞄の中にあった財布を取り出す。
「いいよ、それぐらい。」
康大クンはそう言いながら、会計伝票を探している。
『でも・・・』
「あっ、伝票がないな・・すみません、伝票が届いてないんですが・・」
康大クンは伝票を取り寄せようと店員さんを呼ぶ。
でも、店員さんから返ってきた答えは、“このテーブルのお客様の会計は済んでおります” だった。
どうやらお兄ちゃんがテーブルの上からスマートに伝票を持ち出して会計を済ませてくれていた様子。
こういうのは、お兄ちゃんらしい。
「お兄さんにご馳走さまと宜しく伝えて。」
爽やかな笑顔をしながらそう囁いた康大クンとは店を出たところで別れた。
そして、康大クンの姿が見えなくなったのを目視で確認した私は小走りで家路を急いだ。
1分1秒でも早く帰りたかった場所に向かって。



