ラヴシークレットルーム Ⅰ お医者さんとの不器用な恋



「佐橋さん。」

「はい。」

「・・・ひとつだけ、お聴きしてもいいですか?」


康大クンとの結婚に対して、心の底から嬉しいとは思っていない自分に反省しようとした瞬間。

さっきまであんなにうわの空だったお兄ちゃんが
康大クンに向かってハッキリとした口調でそう語りかけていた。


もしかしてお兄ちゃんまでエンジンかかっちゃったの?!
ひとつお聴きしたいことって
いったい何?!


私とどれくらいの期間お付き合いしてる?とか
私のコトどれくらいスキか?とか
私に子供がいるけれど子供の世話をするのがスキか?とか
仕事における残業は少ないか?とか

あとは

年収はどれくらいか、退職金制度はちゃんとあるか?とか

えっと
え~っと


「ええ、どのような内容でしょうか?」


一人、頭の中が暴走状態になっている私の左斜め前で立ったままの康大クン。
彼はお兄ちゃんに椅子に腰掛けるように手で促しながら、爽やかな笑顔、丁寧な口ぶりでそう言った。

軽く会釈しながら椅子に腰掛けるお兄ちゃん。
そしてお兄ちゃんも康大クンに椅子に腰掛けるようにジェスチャーで勧めてから口を開いた。



「あの、佐橋さんは・・・」

「・・・・・・・・・」

『・・・・・・・・?』


一度話し始めるも言葉を詰まらせてしまったお兄ちゃんを
私もそして康大クンまでもが固唾を呑んで見守っていた。


なに言おうとしたんだろう?
佐橋さんは・・・の続き

やっぱり康大クン自身のコトを聴こうとしてるんだよね?

でも、なかなか言葉が出てこないなんて
お兄ちゃんどうしちゃったの?



『おにい・・・・』

「あの・・・佐橋さんは」


お兄ちゃんが何を言おうとしているのかを問い質そうとした私に
彼は手でストップの合図を突きつけながら、顔だけは康大クンの方を向け、再び口を開いた。
そして康大クンもお兄ちゃんに再びあの爽やかな笑顔を向けながら、彼をじっと見つめた。



「・・・夜空を・・・眺めるのお好きですか?」